外国につながる子どもたちのための絵本を選ぶとき、宗教や文化の違いを配慮することも必要です。日本語支援者ならではの視点で、私はこの問題について考え続けています。まだ肌感覚のレベルかもしれませんが、現時点で分かったことをお話させてください。
ブタは好きじゃないといわれ
ある時ブタの絵本を読んでいました。そうしたところ、インドネシアから来たイスラム教のお母さんから、「ブタは好きじゃない。絵本で見るのも嫌いです」と言われ、思わずはっとしたことがあります。イスラム教の方々は豚を食べないのを知っていましたが、絵本で見るのも楽しくないんだと思い、不特定多数の方の参加するお話会などでは豚がテーマの絵本を避けるようになりました。動物がたくさん出てきて、子どもたちが大好きなのが「てぶくろ」エウゲーニー・M・ラチョフ(福音館書店)です。どんどん増えていく手袋の中の動物をみて、日本語を習いたての子どもたちが「むりー、だめー」と叫びながら楽しんでくれます。今年も寒くなったら読みたいです。
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かわいいでしょ!の押し売りはNG
日本に住む外国の方は、自国で暮らすときよりは自分の文化とは違う文化に対して寛容な態度で生活されているように見えます。しかし、楽しめるか楽しめないかと言えば、タブーのある動物が出ている絵本は楽しめないのが当然だと思います。気を付けなくてはいけないなぁと思います。どうやら犬も要注意のようです。個別性がありますが、留意しなければいけません。かわいいでしょ!の押し付けは慎むようにしています。
鬼のお話
日本ではいろんな鬼がお話に登場します。この鬼をブラジルの方に翻訳してもらう際、鬼は忌々しい感情を伴う、できれば見たくもないし名前を聞きたくもない存在であることがわかりました。また、怒っているよと冗談で人差し指を頭から出す鬼のジェスチャーが、ブラジルの方にはとても失礼なジェスチャーであることもわかりました。知らないって怖いです。そのことを踏まえつつも「桃太郎」は読むようにしています。なるべくかわいらしくて愛嬌のある鬼の絵の絵本を選び、鬼に親近感を持ってもらうような試みをしています。そのとき、ブラジル在住の作家、HIDEKI H.KATSUMOTO さんが制作したポルトガル語の「MOMOTARO」(Leitura &Arte)が大活躍です。https://omukoro.com/por%e3%80%80momotaro/
銭湯
子どもたちの中には、銭湯のシーンをびっくりするほど恥ずかしがる子どもがいます。ブラジル人学校でその反応が顕著でした。日本文化を紹介するために見せたいのですが、あれほど恥ずかしそうにされるとこちらも困ってしまいます。そこで私はtupera tupera の「パンダ銭湯」(絵本館)を読んでみました。とても楽しんでくれたのでほっとしました。人間だと生々しいと感じても、パンダのようなかわいい動物なら良いようです。
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