「このお面がいい!」という子どもたちの言葉が教えてくれた「体験」する意味
おむすびころりん愛知は、外国につながる子どもたちに絵本の読み聞かせを
しています。国籍、日本語の習得歴、年齢、家族構成など、それぞれ違う多様な子どもた
ちと一緒に絵本を囲み、楽しい時間を過ごさせてもらっています。子どもたちが絵本に出
会う場に立ち会っていると、こちらが感謝したくなるような、大きな気づきを得ることが
あります。
子どもたちは絵本の中に知っているもの、慣れ親しんでいるものを見つけると、安堵感に
似た感情が湧き、絵本にでてくる登場人物や物にもっと親近感を持ち、その世界に深く入
っていくことがあります。慣れ親しむためには、ただ読み聞かせるだけではなく、体験と
いうプロセスも大切なんだ。そんなことを実感させてくれたエピソードをご紹介します。
ブラジル人学校で読んだ『おめんです』
今年の5月、ブラジル人学校へ読み聞かせに行きました。週一回の読み聞かせの日でした
。今回の絵本は
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大型絵本でお面の下に隠されている動物を当てる、ゲーム感覚で楽しめる人気の絵本です。言葉が分からなくても面白さが伝わり、ほとんどの子どもが大喜び。にぎやかな時間になりました。その3か月後にも、またこの『おめんです』を同じ子どもたちに読みました。子どもたちは、すでにもうお面の下にだれが隠れているかわかっているんですよね。いつも静かな子や小さい子たちも、正解を言うのが楽しくて仕方ないのが伝わってきます。この日は、子どもたちに「おたふく」「だるま」「かっぱ」「きつね」「ひょっとこ」など、日本独特
のキャラクターたちにも親しんでもらうきっかけを作ることができました。
「おメンテナンス遊び」のきっかけ
絵本には、色々なお面が登場します。かっこいいもの、かわいいもの、少しこわいもの、
派手なもの。絵本の最後の場面に、お面がたくさん書かれている場面になり「みんなはど
んなものが好きなのかな?」「どのお面がいい?」と聞いてみました。反応は「・・・。」。
日本ではお祭りなどでよくキャラクターのお面が売られていたり、お面をしている人を見たりしたことがある子どももいますが、ブラジルではおめんって見慣れたものなのではないのでしょうか。絵本は楽しそうに聞いてくれていたけれど、これといって、気に入ったお面があるわけではなさそうでした。おめんをつけて遊んだことなどはないのかしらと思いました。そこで私たちは、ブラジル人学校の子どもたちとお面を作ってみることにしました。
『かおノート』でおなじみ、 tupera tupera による おめんの創作セットが大活躍。
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日本のおかめ・ひょっとこ 、エジプトのツタンカーメン、マヤの翡翠(ひすい)仮面、中国の京劇面など、世界の のお面をモチーフにした21種類の顔に、付属の紙でできたパーツやシールを貼るだけで、子どもたちが自分だけのお気に入りのお面をつくることができます。当日、好みのお面を取り合いけんかをしないか心配しましたが、ブラジル人学校の先生が手際良く、サクサクと配ってくださり問題なく始められました。あっという間に作る子、
色々考えて悩みながらゆっくりと作る子もいて、その作る姿もとても興味深かったです。
こどもたちは作る過程そのものを楽しんでくれたようでした。自分で作ったお面をつけて
、お互い見せ合うととても嬉しそう。おめんづくりは大成功。
その翌週は、このブラジル人学校で『おめんです 2』(作: いしかわ こうじ 出版社
: 偕成社)を読みました。
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絵本を開いたとたん、子どもたちの目が輝いているのが分かりました。前の週にお面を作って、実際つけて遊んだことで、お面というものが、子どもたちの中に意味ある言葉になったのではないかと感じました。分からない言葉がたくさん出て来ても、興奮しながら聞いています。僕はこれがいい、私はこれがいいと大騒ぎ。私たちはお面が子どもたちにとって慣れ親しんだものになり、子どもたちの中に入っていくプロセスを目の当たりにしました。絵本が、まだ知らない世界を体験するきっかけを作り、お面作りの体験でよりお面に興味がわき、再び絵本の世界に没頭するきっかけを作ることがわかりました。
ダンゴムシの絵本を読むときは、ダンゴムシを見せてあげたい、できれば一緒に捕まえに行けたらいいな。猿蟹合戦を読むときは、一緒に柿を食べたいなと思いをはせる私たちです。
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