活動をしていて感じること

「こんにちは あかぎつね!」 色の不思議に大人も子どもも大興奮

こんにちは、さびねこです。

コロナの状況も落ち着いてきて、おむすびころりん愛知はそろりそろりと読み聞かせ活動を再開させました。先日、来日間もない子どもが日本語を勉強している教室に行ってきました。一年生が三人、二年生?が一人。全員ブラジルにルーツのあるポルトガル語が継承語の子ども達でした。

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こんにちはあかぎつね! [ エリック・カール ]
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私が持参したのは「こんにちは。あかぎつね!」(エリック・カール作 佐野洋子訳 偕成社)です。あれ?表紙の絵をご覧ください。赤くないです。ところがこの絵本には驚くような仕掛けがされているのです。ゲーテの色の輪ってご存じでしょうか。あの偉大なドイツの詩人ゲーテは色には赤、青、黄の三原色があり、すべての色には反対色があることを発見していたのです。この絵本では反対色(補色)が楽しく発見できるように作られています。小さいかえるの誕生日にやってきてくれた色とりどりの生き物たちを、じっと目を凝らしてみて、それから真っ白な隣のページを見ます。そうすると反対色の生き物が残像として浮かび上がってくるんです。

この日、最初に見たのは大きな赤いハートです。子どもたちにブラジル人の先生たちと一緒に10かぞえながらじっくりハートを見てもらいました。「コラソン、コラソン」(ポルトガル語で心臓の意)という声が聞こえてきました。それから、隣の真っ白いページを見てもらうと、ひとりの女の子が興奮した声で「みどり!」と叫びました。ああ見えたんだなぁと嬉しくなりました。見えなかった子ども、大人もやがて見えるようになると大声で大喜び。遠くの机で仕事をしていたスタッフも加わり、大騒ぎです。もう、日本語をじっくり読もうとしても誰も聞いてはいない様子。ただただ、ページを凝視するのみです。長年読み聞かせをやってきましたが、こんなに絵本を真剣に見入っている現場に立ち会ったのは初めてです。次にはあかぎつねが出てきますが、実際は緑のきつねが描かれています。「あかいきつねです」といってゆっくり10数えます。そして白いページを見せると見えた子は大興奮、見えない子も必死です。私は赤いきつねが皆に見えますようにと祈るばかり。最後には全員見えたようです。

そんな風に大騒ぎの読み聞かせは終わりました。この体験が子どもたちに何を残すでしょうね。大人の思惑とは違うものかもしれません。日本語の先生の思惑としては、このような強烈なエピソードとともに色の名前を憶えてもらったり、補色の概念を体験してもらえるといいなと思います。でも、そうじゃなくても良いのではと思うんです。その場に一緒にいて「絵本楽しかったね」と言い合えたなら、それでよいのではと思う今日この頃です。

 

 

 

 

ABOUT ME
さびねこ
日本語教師。外国から来た子どものためにどんな絵本が良いか、いつも考えている。絵本専門士でもある。週末は猫と遊び、テニスを楽しむ。